上野大照
上野大照

そもそも本心って何?【こころの仕組み194号】

2019/3/20配信



◆ヒトコト こころの仕組み


「“本心”と“本心だと思っているもの”は違うものかもしれない」


 


皆様


上野大照です。



随分久しぶりの配信となってしまいました。


皆様はご自愛でお過ごしいただいてましたでしょうか。


 


今号では、セラピストとして、そして心理講座主催者として、最近強く思わされている“本心”というというものについて、思うところをシェアさせていただこうと思います。


 


公開イベントについて


先に講座やイベントで近日中のものが出揃っておりますので、そちらを紹介させていただこうと思います。


一般向け講座としての「心を学ぶ講座」は、


心理編で深く自分と人を知る「自己の旅」を、言語編で人と人とを結んでいる「言葉の旅」を、統合編で性として生物としての本質的な「男女の旅」をお届けしています。


こちらから近日実施の講座が見れますので、どうぞご確認ください。


https://www.reservestock.jp/page/event_calendar/12858/


 


本当の心とは


この仕事をしていると、本心とは何かについて、日々、とても考えさせられます。


時に人は、相手が考えていることの裏を知りたくて、「本心ではどう思っているのだろうか」と疑いますし、自分の考えていることがわからなくなって、「自分の本心がわからない」と言ったりもします。


そしてこのことは、私が心理探求家として活動している本質的な存在意義でもあるように思う事柄です。


本当の心とは一体何で、どこにそれがあるのでしょうか。


そこで今号では、本能に従うべき(自由重視)が良いのか、それとも人や社会に合わせること(統制重視)が良いのかという二分された考え方について、私なりに思うところを書くことで、その解説とさせていただこうと思います。


本能に従え


「本能に従って生きるのが良い」


この言葉は、心理学の世界に居ると、よく聞きます。


「無理してるから人生が狂い始めるんです」


「周りに合わせてばかり居ると、苦しくなるよ」


とてももっともらしい意見ですし、実際そういうことは多いのだと思います。


ただ、この場合の“本能”や“本心”というのは、一体何のことを指しているのでしょうか。


精神分析という最古とも言える心理学では、一般的に言う“我慢”のことを、“抑圧”という専門用語を使って表現します。


人の意志を「抑えて圧しつけた」という意味なのでしょう。


そして本能や、本心とは、この「我慢のない状態」を指しているようです。


一般的には油断大敵という言葉を多く使いますが、心理学的には“我慢大敵”なわけです。


しかし、どうしてそうまでして我慢が問題だと言ったでしょうか。


そこにはある程度明確な理由が存在するようです。


嫌いなのに好きと言わざるを得なかった…


4歳で両親が離婚してしまった少年がいました。


その後少年は母親に育てられましたが、母は独立開業の準備や、兄の入院看病などの理由で、親戚(叔父や伯母)によく預けられていました。


親戚たちはとても親切な人達で、特に少年をいじめたりするようなことはありません。


逆に「こうやって苦労してる君はきっと立派な大人になる」と、多くの大人たちに見守られ、優しく育てられました。


ただ、少年にとって、生きる上での我慢がなかったのかどうかは、それと別の話です。


やはり叔父の家に泊まらせていただいていたある晩、少年がトイレに行こうと目覚めた時です。


リビングの方から、ひそひそと叔父と奥さんの話し声が聞こえます。


「あの子、いつまでうちで預からないといけないのかしらね…」


既に5歳になった少年。


その言葉の意味がわからないことはありませんでした。


叔父の子ども(年の近い従兄弟)達も一緒に住む家。


「旅行も遊園地も、いつも一緒ってわけにもいかないのよね…」


深くはわからずとも、やはり自分が“何か邪魔な存在”なことくらいは理解していました。


しかし、いつ迎えにくるともわからない母を待ちながら、少年にできることはあまりありません。


その中でできることと言えば、“良い子”として迷惑をかけないこと。


当時の良い子の代名詞。


それは食べ物に好き嫌いがないことでした。


好き嫌いがないだけで、おばさんは献立に困らなくて良いので褒められます。


正月になると親戚たちが並んで食べる“おせち”。


栗きんとんや紅白蒲鉾など、美味しいと思うものもたしかにありますが、子どもにとって大好きな料理とも言えないことがあります。


少年の前には、酢の物である“なます”が一盛り皿に乗っていました。


自他ともに認める“良い子”の少年です。


「おばちゃんのなます、おいしいね!」


本当には嫌いでしたが、特別笑顔を振りまいて食べたのです。


他の従兄弟達、皆が驚きました。


なますはそこに居た子ども達全員が嫌いだったのです。


「◯◯くん、なます好きなんだ!僕のも食べてよ!」


「うん、僕大好きだからドンドン持ってきて!」


何故かそんなことを言ってしまった少年の前には、従兄弟たち全員が一人ずつ食べるはずだったなますが山盛りに。


無理して美味しいと食べ続けるうち、他のものはお腹に入らなくなってしまいました。


少しして、でてきたのはお雑煮。


餅は子どもたちみんなが大好き。


少年も餅が人一倍大好きでした。


既になますでお腹を満たしてしまった彼は、それを食べることができませんでした。


「◯◯くんは、ほんとすごいね!えらいと思う。きっと立派な大人になる。」


悪意も疑いもない、澄んだ親戚一同の声。


「そうだ、僕は良い子なんだ…」


我慢は人格を歪める


精神分析をはじめとする多くの心理学が、我慢を問題視してきた理由は明白です。


それは、「我慢は人格を歪める」という共通認識があるからなのです。


また、人間はやりたいことをやっている時と、やりたくないことをやらされている時とでは、やりがいが違うのはもちろんのこと、能力発揮のレベルや、生産性に大きく差がでます。


やりたいことをやっているのは、もちろん精神的に健全でしょうし、やりたくないことをやらされているのは当たり前ですが“苦痛”です。


また、一時的な我慢と、継続的な我慢とでは話が違います。


一時的なものであれば、その単一な出来事についてだけ心がケアできれば、問題ありません。


しかし、継続的な我慢をすれば、我慢していない状態(自由な心)を表に出せないわけですから、諦める方が早いという状態になりかねないわけです。


子どもの頃、できることならずっと甘え続けたかったかもしれません。


言いたいことを言いたいように言い続けたかったかもしれません。


しかし、多くの人は、それを許されることがなく、多くを諦めざるを得ないように育てられます。


どれだけ主張したくても、それが全く叶えられない環境が続けば、やはり諦めるのが早い以上、「自分にはそういう考えは元々無かったんだ」とするのが楽なのは、わかる気もします。


これによって起こることが、もう「我慢している」と人に演技することさえなくなった状態。


ある意味、性格の歪みとも言えます。


ただ、歪みと言っても、それがそのまま何かの特技を生み出したり、誰かにとても重宝されて、結果としてその性質によって生きやすい環境を見出したりすることもありますので、一概に問題とは言い切れません。


では問題はどこにあるのでしょう。


ここで問題になるのは、やはり“本心とは何か”ということなのです。


歪んだ本心?


実は最近、心理を語る専門家の何人もが、「他人にどう見られたとしても、本心を貫いて生きろ!」といった表現をしているようです。


したいなら、セックスをいろんな人とやり続けたら良い。


不倫大賛成、愛は無限なのだから。


子どもの養育など、好きじゃないならやらなければ良い。


死にたければ自殺したら良い。


お酒が気持ちを救うなら、ドンドン飲めば良い。


そんな項目を挙げればキリがありません。


そしてこういったことの一つ一つに問題だという話では、もちろんありません。


それぞれに人は事情を抱えていますし、そういった相談を受けることこそ、セラピストの本懐だとも言えるからです。


ただ、できたら一つたずねてみたいのが、この場合、本心と呼んでいるものは、本当に本心なのかということです。


「我慢し続けてきたんだから、やりたいことをやりたいようにやってみても良いんじゃないか。」


それはよくわかります。


ただ、それにも程度があるのではないか。


タガが外れることこそ、心理学が望んでいたことなのでしょうか。


タガを外すことにさえ、成功すればそれで良いのでしょうか。


そこには何か疑問も残ります。


それが深く本人の心を満たし、人生を豊かにしていくとも言い切れない気がするからです。


実は本心を見えていないのでは


少年のストーリーからも分かる通り、人は“凍結させた意志”を隠し、被るようになってしまった仮面を自分の人格として認め、生きるようになるのかもしれません。


もし、それが本当にそうなのであれば、大人になればなるほど、実際上の本心が見えなくなるのではないかと、日々のカウンセリングをしていて感じさせられるのです。


上面だけの、短絡的に今欲しいと思うものだけを貪りたいと願う心に、本質的な美しさがあるのかどうかは、なんとも言えないところがあります。


少なくとも、それを人生の中心に置き、それがあるからこそ自分の命の意味はあるのだと、生きがいとやりがいをもって言い切れることは、少ないのではないかとも思うのです。


だからこそ、この“本当の本心”が見えるようになることが、人に幸福を伝えたい人間として、とても重要なのではないかと感じています。


そのヒントは、おそらく、先に書いた“凍結させた意志”にあるでしょうし、それを溶解させてくれる何かに出会うことが、きっと人生に叶えたかった何かを見えるようにさせてくれると信じます。


実は本心の蓋を開けることは難しいかもしれないのが、人間心理という分野。


これを扱い続けることこそ、どこまで行っても私の生きがいです。


この文章を読んでくださった皆様に、心温まる本心と向き合えるタイミングがあることを願っております。


いつもご愛読ありがとうございます。


 


追記

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