浜田義之

酒と悟り 第四拾七話 見知らぬ天井

2021/3/19配信


皆様


 


いらっしゃいませ、マスターの浜田です。



今日のお話は、わたしが実際に体験したことですが、
実はとても大切な【変容】が起こっているときでした。



勿論、その最中は、まさかそんなことが、
自分の体験の背後で起こっているとは見当もつきませんでした。



では今日のお話をお楽しみください。



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   これまでのあらすじ



男はバーのカウンターで不思議な紳士と出会ったことがきっかけで、
本当の自分へと還る目覚めの旅がはじまりました。



座禅修行で人生の師となる老師と出会い、
男は自己の内面に深い神聖な静寂を見つけます。



そして座禅修行で素晴らしい体験をした男は、
今度は10日間山に籠っての瞑想行に参加します。



10日間も山に籠って非日常って面白そう!



慣れない環境、慣れない瞑想法にはじめ男は
雑念や足腰の痛みに翻弄されはしましたが、
3日もすると穏やかな深い瞑想が出来るようになりました。



ところが3日目の午後からはじまった本格的な瞑想に
男は面食らいます。



かつて経験したことのない集中力を要求され、
男はフラフラになってしまったのでした。



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    見知らぬ天井
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男は天井を眺めていた。



夜の山は静まり返っていた。



男はまんじりともできずにいた。



目が冴えて眠れない。



今日の瞑想は本当にきつかった....。



今日の午前中までは、本当に気持ちよく瞑想ができていたのに。



眠っているのか起きているのか定かでない
眠りと覚醒の境界をゆらゆらと揺り篭に揺られるように楽しめていたのに。



本格的な瞑想が始まった途端、
一瞬も気を抜けない、集中力の持続を要求され、
ヘトヘトに疲れてしまった。



あんな一瞬も油断できない集中力など、
今まで一度も経験したことなどなかった。



一瞬も油断なく、途切れさせることのない集中。



そんなのできるわけない。



気がついたときにはもう、集中は途切れて考え事をしている。



しかもその考えは後ろ向きだ。



ああ辛い、ああしんどい、もう帰りたい
早く帰りたい こなければよかったこんなところ


あと7日.....あと7日もここにいるのか


あと7日もこの過酷なことをやらないといけないのか


ああしんどい、早く帰りたい、早く終わってほしい


 


そんな後悔と、自ら安易に選んだことへの自責の念とが入り乱れ、
同じような考えを、壊れたレコーダーのように
ぐるぐるぐるぐると思考はリピート再生した。


 


そしてそれに呼応し、心地よくない気持ち
不快な感情は湧いては持続した。



ヘトヘトだ。



あの瞑想でもう、ヘトヘトだ。



だけど....へとへとなのに眠れない。



疲れているのに、疲れ切っているのに眠れない。



男がぼんやりと開いた目に映るのは、見知らぬ天井だった。



天井を眺めていたのではない。



目を開けていたら、ただそこに天井があるだけだ。



眠れない...早く寝なくちゃ...でないと明日が辛い。



どうして眠れないんだろう



どうやったら眠れるんだろう


 


男は何度も呼吸を静かに観察した。


 


ゆっくりとゆっくりと息を吸い
ゆっくりとゆっくりと息を吐き、
そのゆったりさの中に溶けていこうとした。


 


だが冴えた意識は、眠りの揺り篭を寄せ付けなかった。



男を眠らせてくれなかった。


 


眠りたい....早く眠りたい


少しでも眠りたい


でないと明日しんどい


 


男の目は冴え、眠ることはできなかった。


 


男はただ、見知らぬ天井を眺め続けた。


 


つづく


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      あとがき



今日のタイトルは、もしかしたら
「あれ?このタイトル聞いたことある」と思われた方も
いらっしゃるかもしれませんね。


今日のタイトルは某有名なアニメ作品からいただきました。


今日のお話の内容は、わたしの実際の実体験です。


このような体験の最中は、勿論わかりませんでしたが、
後から分かったのは、こういう体験もプロセスとして
とてもとても大切なものだったんだということでした。


頭ではわからない重要な変容が、このとき起こっていたんですね。


とはいっても、嫌なものは嫌ですが(笑)。


こういう経験も、実は通り過ぎる一つの体験で、
実は重要な変容のプロセスの一部なのかもしれない
ということを知っていると、同じような経験があったとき、
慌てて何とかしようとしなくてよくなるんじゃないかと思います。


少しでも今日のお話が役立つと幸いです。


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