浜田義之

酒と悟り 第四拾参話 みえた光明

2021/2/19配信


皆様


 


いらっしゃいませ、マスターの浜田です。



 


毎週金曜日にお届けしている
わたし自身の体験をもとにした物語
「酒と悟り」を今夜はお送りします。


 


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   これまでのあらすじ



男はバーのカウンターで不思議な紳士と出会ったことがきっかけで、
本当の自分へと還る目覚めの旅がはじまりました。



座禅修行で人生の師となる老師と出会い、
男は自己の内面に深い神聖な静寂を見つけます。



そして座禅修行で素晴らしい体験をした男は、
今度は10日間山に籠っての瞑想行に参加します。



10日間も山に籠って非日常って面白そう!



そんなふうに思っていた男でしたが、
修業が始まった途端、
自分の考えが甘かったことを思い知るのでした。


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     みえた光明
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10日間の間、世俗から離れて山に籠って、
自然に囲まれた中で過ごす。


 


なんて楽しそうなんだ!


 


そう思いワクワクに期待していた男は、
初日の最初の1時間の瞑想で「しまった!」と後悔していた。


 


瞑想なんて座っているだけ。


 


座禅で雑念を乗り越え、静かな境地を経験した自分には、
10日間の瞑想も、きっと素晴らしい体験になるだろうと思っていた。


 


だがどうだ、初日の、最初の1時間の瞑想で、
足はいたくなり、腰や肩も痛くなり、
イライラし、雑念はいっぱいで、1時間がこんなに長いとは!と
思い知らされてしまった。


 


「エライところに来てしまった!」「来なければよかった」
「10日間なんて長すぎる!」「あと丸々9日半あるのか」
男は後悔の気持ちから湧きだす、ため息とともにそう呟いていた。


 


だけどしようがない。


 


もう既に選択したのだから。



やると決意し、選択したのだから。


 


それにこの道場に参加申し込みした際、
10日間はこの場にとどまり、途中で投げ出したりせず、
最後までやりきり参加することを約束していた。


 


途中で投げ出さないこと。


 


それがここに来ることの約束事なのだ。


 


だから投げ出すことはできなかった。


 


そして男も投げ出す気はなかった。


 


なぜなら自分が選択したのだもの。


 


自分が決め、自分がやると選択したのだもの。
誰のせいでもない、自分の選択なのだ。


 


だが、正直最初の1時間が予想以上にしんどかったことで、
これからの9日半のことを思うと、不安が頭をもたげていた。


 



10日間のこの瞑想行では、1日に計6回、
ホールに集まって全員で1時間瞑想する時間がある。


 


この時間以外も、朝食と昼食、そして入浴以外の時間は、
各自の部屋で1日中瞑想するように指示された。


 


10日間の間、ただひたすらに瞑想するのだ。


 


座禅修行のときはまだ、息抜きできる時間があった。


 


思えばまだ、老師と話す時間があった。


 


だがここでは10日間、誰とも話さない。
だれとも目を合わさない。


 


ただひたすら孤独に自分と向き合うのだ。


 


初日だけで男はこのことを思うと、気が滅入る気がした。


 


1日の終わりには夜20時から一時間、
インドの瞑想指導者の音声による(日本語訳だったが)
瞑想の心得や注意点の講話があった。


 



男にとってはこの時間が1日の中で、
一番ほっとする、楽しい時間だった。


 



講話の内容は面白かったし、
瞑想指導者の話もユーモアがあって、
笑えるポイントがあって面白かった。


 



2日目の瞑想も、初日と同じくイライラした。


 



あぐらを組む足は痛み、肩や肩甲骨、
腰のあたりはこったような鈍いだるさを感じ、
雑念は消えることなく、集中できずイライラした。


 



座禅でも始めそうだったじゃないか。


 



瞑想していたらきっと、クリアになる。


 


男はそう自分に言い聞かせた。


 


なによりもはじめて座禅に行った時とは、今は違う。


 


雑念が静まる体験をし、こころが静寂に満たされる経験を
座禅で経験しているのだ。


 


もう既にそうなることを知っている。


 


だからきっと大丈夫だ。
今は静かではないけれど。


 


そう男は思っていた。


 


2日目の瞑想も結局1日、しんどさとの格闘だった。


 



それにしても....他の修行者たちは静かに座っている。


 


老若男女の参加者たちはみな、静かに座っている。


 


みんな辛くないのだろうか????


 


男は自分だけが苦しんでいるような気がした。


 


3日目の瞑想も朝から辛かった。


 


思えば、辛い思いをする。
辛い思いをしたくない。
我慢しなければならない。


 


そんな思いが、毎回瞑想に入る前から、
男を憂鬱にさせていたのだろう。


 


3日目もそんなところからの修行のスタートだった。


 


だが。


 


午後になって、男の瞑想は変わった。


 


急に心は静まり、気持ちよく瞑想できるようになっていた。


 


イライラは消え、足腰の痛みも気にならなくなっていた。


 


意識は覚醒しながら、身体と思考は半分眠っているような
そんな夢心地のような心地よさが男に訪れた。


 


「ああ、この感覚だ」


 


男はやっと訪れた安らぎに安堵した。


 


「これだ、これを待っていたんだ」


 


やっと訪れた安らぎに男は安心した。


 


やっとみえた光明だった。


 



つづく


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