浜田義之
酒と悟り 第参拾六話 大人になって還ってきた
皆様
あけましておめでとうございます
マスターの濵田です。
数か月にわたって連載してきた
一人の男が本当の自分に帰っていく物語「酒と悟り」
今日は第一章「座禅修行編」のいよいよ最終回です。
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これまでのあらすじ
バーで不思議な紳士と出会ったことがきっかけで、
男の本当の自分に還る旅がはじまった。
男は不思議な縁から座禅修行へとおもむく。
そこで男は生まれ変わる体験をした。
1週間の禅修行は男の「なにか」を変えた。
男は変わった。
そして男は老師に別れを告げ、元いた世界に帰還する。
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大人になって帰ってきた
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男はローカル線に揺られながら新幹線の駅に向かった。
海沿いの単線。
初夏の明るい陽射しが青い海を輝かせていた。
海はキラキラと光っていた。
一週間の禅修行。
一生の間のほんのわずかな時間。
ほんの小さな小さな出来事。
だけどこの一週間は男の「なにか」を変えた。
男は自分の中の「なにか」が変わったのをはっきりと感じていた。
男は自分のうちの静けさを知った。
喧噪の中の静けさ、自分の鼓動の向こうの静けさ。
静けさが自分のうちにあることを知った。
そして男の中に目には見えない軸が、
中心ができたのを知った。
なにがあってもぶれることのない中心。
それが自分のうちにあるのを知った。
そして落着き。
かつてない落着きが男には身についていた。
いや、身につけたのではなく、落着きが男に宿ったのだろう。
男は禅道場を訪れる際もこのローカル線に乗っていた。
だが訪れたときの自分と、今去ろうとしている自分は、
同じ男でありながら、別の人に変わっていた。
彼は去ったのだ。
そして今、新しい、おそらく本来の自分がここにいる。
駅につくと男は自分の街に向かう新幹線に乗った。
男が自分の指定席に座ろうとした時だった。
「やあ」
後ろから声がした。
振り向くと禅修行で一緒だったカウンセラーが立っていた。
「隣の席だったんですね」
男は笑顔でうなずいた。
新幹線が走りだし、窓の向こうの景色が動き出した。
男はしばらくの間、流れる景色を静かに見つめていた。
ふと隣のカウンセラーが声をかけてきた。
「あのね」
「ええ」
「君は禅修行の間ずっと、雑念に悩まされていたって言ってましたよね」
「ええ」
「実はね、わたしは全く大丈夫だったんですよ」
「.......」
なんか変なことを言い出したぞ.....。
と男は思った。
このカウンセラーはなにを言い出すのだろう?
男は黙ってカウンセラーの次の言葉を待った。
「座っていると雑念がやってくるでしょう?」
「そしたらね、そこで心理学のメソッドを使って、
浮かんできた雑念にイメージングでダイナマイトを括りつけるんですよ」
「で、風船で宙に浮かび上がらせて、空中でバン!って爆発させるんです」
「雑念が浮かぶたびにわたしはこれをやってたんです」
「だから雑念に苦しむことは一切なかったんですよ」
カウンセラーは笑顔で得意げにそう言った。
男はポカンとした顔でそれを聞いた。
あんたそれ....全部雑念じゃんか!!!!!
男は心の中で苦笑した。
男はなにも言わなかった。
なにも言えなかった。
得意そうな顔をしているカウンセラーに、
「それ、全部雑念だよ」「一週間なにも得られなかったんだよ」
とは言えなかった。
カウンセラーは間違った禅をして、
これから関わるクライアントに間違った手法を伝えるのだろうか。
だけど男はなにも言えなかった。
が、しばらくしてだんだん可笑しくなってきた。
人って....なんて自分のことが見えないんだろう(笑)。
なんて自分のことを知らないんだろう。
かつて最初の師は男に言った。
魚には水がみえない
鳥には空気がみえない
そして...人は自分がみえないと。
人って本当に自分のことが見えないんだ。
そう思うと可笑しくなってきて、思わず吹き出していた。
「どうしたんです?」
そう問うてくるカウンセラーに男は、
「いや、なんでもありません(笑)」と笑いながら答えていた。
彼が幸せならばそれもまたいいのかもしれない。
そんな気がした。
駅に着くと男はカウンセラーと別れた。
改札を抜けると男の友人たちが迎えに来てくれていた。
禅から帰ってきた男がどうなっているか興味があったらしい。
男と顔を合わすなり、友人の一人の女性が小さく声をあげた。
「あ、なんか大人になって帰ってきた....」
大人になった。
男はこの言葉がなんだか嬉しく感じた。
駅を出ると初夏の太陽がまぶしかった。
第一章 座禅修行編 終
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あとがき
数か月間に渡り連載してきた「酒と悟り」の
「座禅修行編」はこれで完結です。
連載してきたお話は、すべてわたしの実体験がベースになっています。
文章も行間から、言葉の一つ一つから、
受け取れるように描いています。
思い出す度何度でも読み返していただければと思います。
その度、以前は気づかなかった新しい気づき、
発見があり、あなたの人生に活かしていただければ幸いです。
こちらより第一話からお読みいただけます。
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次回から新章に突入します。
楽しみにしていてください。
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マスターからのメッセージ
座禅瞑想はわたしの人生を変えました。
本当に変えてくれました。
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続ければ続けるほど、変わっていきます。
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