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藤由達藏

「情報の扱い方と表現の自由について～フランス・教師殺害事件について思うこと：その5」【空飛ぶ創造性メルマガ】vol.94

2020/11/24配信

「情報の扱い方と表現の自由について～フランス・教師殺害事件について思うこと：その5」【空飛ぶ創造性メルマガ】vol.94

皆様、こんにちは。
小説家の野間美智子です。

先週まで「表現の自由」についてフランスと日本の違いを考察したり、「教育の自由」についての在り方について書いてきました。

さて、突然、自分の話で申し訳ないのですが、大学時代に私が書いた文章が、講師だった先生の目に留まり、そのまま著書に載せてもらうことになりました。

ちくま学芸文庫から出ている『文章表現　四〇〇字からのレッスン』（梅田卓夫）という本です。
この中の「STRAWBERRY FIELDS FOREVER」という小文が、私の書いたものです。
（他の生徒もたくさん選ばれている中のひとつです）

内容は大学内のひとコマを書いた文章ですが、そのときの先生の評を、この事件を知った時に思い出しました。

「大学が巨大化し、互いに同じ大学の職員と学生であること以外は何もわからない人間がふと接触し合う場面は、学内のいたるところで日々おこっています。でも、そこは一つの大学、一般社会の人間関係とは違う、一種の「安らぎ」が支配しています」

先生が書いている大学内の「安らぎ」。
たとえそこが、ずっと研究を続けていくわけでもなく、若者のモラトリアムのためのかりそめの場だとしても、同じ学問を志す間は、同志として認め、保証され、安心安全に守られた世界。

私は、学校やアカデミックさというものは本来、そういうものだと思っていました。
時に大学、特に研究室は「象牙の塔」と揶揄されることもありますが、それも、外側からの世界から遮断され、芸術や教育が守られているからこそのものだ、と。
だからこそ、さまざまなことが忖度なく、自由に扱われるものなのだと。たとえそれが理想や建前だとしてもです。

そのため、やはり今回の事件はとてもショックでした。
私の中で「ルール違反だ」という怒りが湧いてきてしまったのです。

もし、思想に対して文句があるのなら暴力ではなく、言論か、思想で訴えるというのが本来の議論の在り方です。

アメリカで起こる生徒による銃の乱射事件も切実ですが、授業の内容に反発して事件が起こるというのは、もっと抑圧的な気がします。

安全である、守られているはずの教育機関で殺人や事件が起こってしまったら、もう安全に学べる場所はどこにもないということになります。

しかし極度に発達した情報社会の今、授業の内容にしても、個人情報にしても、「守る」ということは根本的に難しいのかもしれません。
そして守ろうとするから、かえって暴かれてしまうという逆接的なことが起こってしまいます。

学校はもはや安全な場と言えないのかもしれません。
特にフランスでは先生が教えている生徒たちが、テロリストにならないという可能性はないのです。

フランスの新聞によると（すみません、出典がどの新聞だったか記録するのを忘れてしまいました）、テロに未成年者の関与が疑われており、2014年から550人以上捕まっています。

ＩＳ（イスラム国）が、若者に影響力のある動画アプリ、TikTokを使って影響を持ち始めているとまで言われています。

若いころは、どうしても過激な思想に魅力を感じます。

本当に世の中を変えたい、もっと良くしたいといった純粋な思い。
今いる自分の現状をなんとかしたい、変えていきたい。
大人たちは何もできない。自分たちの利益を守ることしか考えていない。

そんな社会に嫌気がさし、世の中を変えてくれそうな、時代を動かしてくれそうな物を求めるのです。

さて、私がこの事件で改めて注目したいのは、