【097】酒と悟り 第十四話 たとえ1憶2千万人が相手でも
こんばんは、魂の使命を生きながら、人生そのものを楽しむ、
スピリットナビゲーターのマスターこと浜田義之です。
今週は一週間、クルマで旅をしています。
本日京都へ向けて走っています。
ブログに旅の道中の話を書いていますので、
よかったらぜひご覧ください。
マスターのブログはこちら
https://ameblo.jp/hamadahiroake/
それからおしらせです
8月1日 好きなことを仕事にして生きることについて
オンライントークライブをやります。
詳細はこちら
https://www.reservestock.jp/events/461031
────────────────────────
それでは今夜の本編に入りましょう。
毎週金曜日の21時にお送りする、
本当の自分・魂の本当の目覚めへと導く物語。
この「酒と悟り」の物語は、
物語の行間から深い「気づき」や「閃き」
「インスピレーション」を受け取れるように
意図して創作している【特別なお話】です。
どうぞ行間から気づきや閃きを受け取ってください。
────────────────────────
◆この話を第一話からお読みになりたい方はこちらからどうぞ
https://www.reservestock.jp/subscribe/NjJkZmVmYWRiY
────────────────────────
今夜は第十四話をお送りします。
バーのカウンターで
不思議な紳士に出会ったことをきっかけに、
男は本当の自分・真理に目覚めたい
という思いを抱きはじめました。
そして縁から男は禅の老師と出会い、
いよいよ本格的な修行をはじめました。
────────────────────────
たとえ1憶2千万人が相手でも
────────────────────────
翌朝の起床は朝4時半だった。
外はまだ薄暗く、山奥の朝は肌寒かった。
障子を開けると濃い群青色の空が広がり、
天空(そら)を見上げるとまだそこには星々が瞬いていた。
向こうの山の稜線には朝陽が赤い帯になっていた。
細いその帯は明るいオレンジと紅い色がグラデーションしており、
群青色の空との間は青紫にグラデーションしていた。
男は洗面所に向かうと顔を洗った。
山の水はひんやりと冷たかった。
目が覚めるのを感じた。
鏡を見つめる男。
男は鏡の中の自分自身を見つめた。
自分は何処から来て、何処へ行くのか。
そんな言葉が浮かんだ。
男は禅堂へと向かった。
夜の明けきらない朝の禅堂は薄暗かった。
男が禅堂についたときには、
もう既にほかの参禅者は壁に向かって座り、座禅を組んでいた。
男は禅堂の入り口で合掌、一礼してから静かに自分の座布へと向かった。
一歩一歩静かに歩いた。
この静けさに敬意を払うように。
座布の前に立ち、合掌し、静かに一礼する。
そして背の方に向き直ると、反対側の方角にも合掌し、一礼した。
そうして座布に腰を下ろすと、くるりと壁に向きを変えた。
この瞬間だけは不思議な感触だった。
座禅ははじめての筈なのに、もうずっとやり慣れているような、
そんな不思議な感覚を感じた。
男は呼吸を整え、すうっと深い深呼吸をして、スッと心を定めた。
一呼吸に集中する。
男は入ってくる息、出ていく息に注意を払い続けた。
見逃さないように。
どのくらい時間が経ったろう。
ハッと気がつくと、男はまた考え事の世界にいた。
いつの間にか呼吸から意識が離れ、
いつの間にか考え事が始まっていたのだ。
男は気を取り直し、またスッと心を定めると一呼吸に意識を集中した。
出ていく息、入ってくる息。
その一呼吸一呼吸を見逃さないように、
心が離れないように、注意深く意識を集中した。
一呼吸....一呼吸....一呼吸......。
どのくらい時間がったのか。
まただ......。
男は心の中でつぶやいた。
またいつの間にか考え事をしていた。
昨日と何も変わらない。
気がついたら考え事の世界に連れていかれている。
男は朝の六時までの一時間、考え事と格闘し続けた。
徐々に夜は明け、気がつくと禅堂は明るくなっていた。
禅堂の窓からは、朝露に濡れた木々の葉が見えた。
鳥のさえずる声が聴こえてきた。
そんなときだった。
カン・カン・カン!
朝食の時間を告げる板木を叩く音が山々にこだまし、
禅堂にも聴こえてきた。
左腕のサブマリーナをみると6時になっていた。
禅堂の参禅者は各々に立ち上がり、合掌、礼をすると禅堂を出ていった。
彼らの背中を見届けると、男も立ち上がり、合掌、礼をして食堂へと向かった。
食堂につくと男は昨日と同じ席についた。
昨日と同じように全員が合掌し、般若心経を唱えた。
そして同じく食事への感謝である五観の偈(ごかんのげ)を読経した。
そうしてまた、あのスローモーションのような食事がはじまった。
なぜこんなことをするのか。
どんな目的、意味があるのか、いまだに男にはわからなかった。
どういう意味があるのですか?
なぜこんなことをするんですか?
そんな質問ができる空気ではなかった。
ただただ周りを真似て、同じように動作するだけ。
男にはそうする選択肢しかなかった。
男の最初の師が言っていたことある。
男がまだ20歳そこそこの頃に出会った師だ。
師は言っていた。
「本当の賢者は質問がダサいと相手してくれないものだ」
あまりに印象的な言葉だったので、男はよく覚えていた。
なぜこんな動きをするんですか?
どんな意味があるんですか?
そんな質問はここではするべきではないという思いが、男の脳裏にはあった。
そんな質問できる空気ではないのを感じていたが、
同時にそんな質問はするべきではないとも思った。
男は見様見真似で他の参禅者のように、ゆっくりと動こうと努めた。
だがその動きは昨日以上にぎこちなかった。
自分でも動きが硬く、ぎこちないことに気づいていた。
それが男の気持ちを焦らせ、更に男を緊張させ、
身体は固くなり、動きも固くしていた。
昨夜の老師の一喝。
あれが男を緊張させ、固くしていた。
ちゃんとしなくては。
ゆっくり動かなければ。
そんな言葉にならない思いが、男の余裕を奪っていた。
ちゃんとしなくては....でなければ....。
その言葉の後ろには「怒られる」
という言葉が続いていた。
何処かでそのことには気づいていた。
だがちゃんとしなくてはという、
言葉にならない思いにとらわれていたこの時の男には、
そこまで気づく余裕はなかった。
幼い頃、誰かの怒号に固まってしまった、身体が覚えていた記憶。
その記憶が男の身体を、動きを固くしていた。
だがそのことに気づく余裕も、まだこの時の男にはなかった....。
食事が終わると老師の法話がはじまった。
座禅について心得、瞑想中に起こることについての
具体的な注意をシンプルに、簡潔に、老師は話した。
男は注意深く老師の言葉に耳を傾けた。
人の話にこんなに真剣に耳を傾けるというのは、
いったいどれくらいぶりだろう?
それくら男は老師の一言一言に注意を払った。
なにを言っているのわからない言葉も多かった。
だが男はそのことにはとらわれなかった。
最初の師のもとで学んだとき、
師の言葉にはわからなものがいっぱいあった。
ところがしばらくすると、ある瞬間、
「あ!」と師が何を言っていたのか理解できたのを体験した。
聞いたときはわからなかったことが、
後になってまるで圧縮ファイルが解凍されるように
ふいにストンと腑に落ちるのを何度も体験してきた。
だから老師の言葉でわからないものがでてきても、
男は焦ることはなかった。
今はわからないものはわからない。
今はわからなくていい。
ちゃんと判るときに判るのだ。
だからわからないことにとらわれなくていい。
男は老師の言葉に耳を傾け続けた。
そんなときだった。
老師は言った。
「既に呼吸をしていたことに気づきなさい」
!
男は「なにを言っているのだろう?」と思った。
きっと奥深い知恵について話しているのだろう。
だがなにについて話しているのかは、今の男には計り知れなかった。
そのときだった、ひとりの参禅者が口を開いた。
「老師!わたしはわかりました!」
あの男だ!
口を開いたのは、昨日老師に一喝されたあの男性だった。
みると男性はニコニコしながら、自信たっぷりそうな顔をしていた。
だが男にはその笑顔が、ヘラヘラしているように見えた。
男にはこの男性が勘違いをしており、
とんちんかんなことを言っているのがすぐにわかった。
ハア?わかっただって?
なにを言っているんだコイツ?
男の中にまた、この男性への侮蔑の思いが浮かんできた。
老師は言った。
「君、そんなに軽く言うもんじゃないよ」
老師は笑顔だった。
相手に勘違いをしていること悟らせるための笑顔なのだろう。
だが男性は引き下がらなかった。
「いえ!わかりました!」
男は思った。
バカじゃないのか?コイツ?
頼むから、もうこれ以上空気を乱さないでくれ!
そんな思いが男の頭を駆け巡った。
怒りと侮蔑の思いとともに。
すると老師は言った。
「君ね、たとえ1億2千万人の人間が、
わたしを欺こうとしたとしてもできないんだよ」
男は老師のこの言葉に一瞬、大きいことを言うなと思った。
だがこの禅というジャンルにおいては、
老師は長年の実戦と経験、師から受け継いできた知恵に基づいた、
揺るがないものがあるのだと思った。
そして指導者としての重大な責任に、立場をとっての、
揺るがない一言なのだろうと思った。
ところがかの男性は思いもかけない言葉を言った。
「そうきますか!」
男性の挑発的ともとれる、
人を小ばかにしたような(男にはそう思えた)言葉に男は思った。
なに言ってるんだ、こいつ!
本当にバカじゃないのか!?
男は内心憤慨した。
蔑み、見下す思いとともに。
だが老師はそれ以上、その男性を相手にしなかった。
「まじめにやんなさい」
それだけ言うと老師は沈黙した。
食事の時間が終わると、また各々立ち上がり、禅堂へと向かった。
男も立ち上がった。
さあ、再戦だ!
つづく。
────────────────────────
☆★オンラインイベントのご案内★☆
・クライアントの本当のニーズを引き出してあげたい方
・セミナーで参加者のハートをつかむ話し方を身につけたい方
・メルマガやブログでもっと商品やサービスの感動を伝えられるようになりたい
・【言葉】を自在に使いこなせるようになりたい
☆★オンラインサロン・マスターズクラブ★☆
・自分の本当にやりたいことを知りたい方
・自分の魂の目的を知りたい方
・才能を使って生きたい
・本当に自分らしい人生を確立したい方
・深い学びの場が欲しかった方
・より深い気づき・学びを得たい方
・マスターのワークを受けたかった方
・マスターの世界観に触れる時間を増やして、人生を豊かにしたい方
【マスターのオンラインサロン】 魂のマスターズクラブ masters club of spirit
配信停止ご希望の方はお手数ではございますが https://resast.jp/page/ss/ から解除をおねがいいたします。
メールアドレスを変更される方はお手数ですが、このメールに返信のうえ、新しいアドレスをお教えください。