濱田預士之
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【084】酒と悟り 第七話 不思議な紳士との再会 

2020/6/12配信


こんばんは、魂の使命を生きながら、人生そのものを楽しむ、
スピリットナビゲーターのマスターこと浜田義之です。


 



 


毎週金曜日の21時にお送りする、
本当の自分・魂の本当の目覚めへと導く物語。


 



この「酒と悟り」の物語は、物語の行間から「気づき」や「閃き」
「インスピレーション」を受け取れるように意図して創っている
実は【特別なお話】です。


 



このお話には特別な思い入れがあります。


そしてそれは、今年2020年から始まった全く新しい時代の
生き方そのものでもあるのです。


 



もう昨年までと全く時代が変わったんですね。


 



このことについて今日、動画を録ってお話していますので、
ぜひご覧ください。


 


受け取るものの深さが変わることと思います。


 


 


◆動画メッセージはこちらからご覧いただけます。
 https://www.youtube.com/watch?v=Sg0dvvK2WVg


 


では、今夜は第7話をお送りします。


 


バーのカウンターで不思議な紳士に出会った男は、
紳士の言葉から、自分の中のなにかが目覚め始めたのを感じました。


そしてマスターとの会話から、男は頭ではわからない、
だけど自分にとっての「なによりも大切なこと」を
思い出したいという思いを抱きはじめました。



────────────────────────


男はなにかを探していた。


 


それは男の人生をこれまでずっと突き動かしてきたものだった。


 


だが男はまだ、自分が本当の本当に求めているものがなんなのかに、
気づくことすらできずにいた。


 


男の魂が本当に望んでいるもの。


 


それはこれから男が知っていくものなのだ。


 


【不思議な紳士との再会】


 


男はあの店のカウンターにいた。


 


あの不思議な初老の紳士に会いたくて、
あれから何度かこの店のカウンターに訪れていた。


 


だが、まだ男は紳士に会えずにいた。


 



 


店のマスターは男が店に訪れると、
男が子供の頃に好きだったものについてや、
子供の頃どんなことがあったのかについて、
関心を持って聞いてくれた。


 


自分のことについて、自分の人生について、
人にこんなに関心を持って聞いてもらったことがなかったので、
マスターが関心を持って聞いてくれることに、男は嬉しかった。


 


だけどよくみていると、
マスターは他の客にはそのようなことは聞いていないようだった。


 


マスターには何が見えているのだろうか?


 


店内にはゆったりとしたジャズのメロディが、
静かに穏やかに流れていた。


 


男は目の前のロックグラスを手に取ると、
ぐいとひとくち、ウィスキーを飲った。


 


15年物のラフロイグの、
ピートの効いたスモーキーな香りと味覚が、
男の舌にじっくりと染み渡り、豊かな香りが広がった。


 


そのときだった。


 


男は気配を感じて、思わず隣の席を振り向いた。


 


 


あの紳士だ!!!


 


 


そこには穏やかさと静けさと落着きの余韻を漂わせた、
あの紳士が座っていた。


 


やっと会えた!


 


男は心の中で叫んだ。


 


「あの...あれからあなたにまたお会いしたいと思っていたんです」


 


男は冷静に振舞おうと意識しながら、紳士に話しかけた。


 


男の方を向くと紳士は、にっこりと優しい笑みを浮かべた。


 


「迷っていらっしゃるんですね?」


 


え?


 


男は紳士の思いがけない言葉に驚いた。


 


この紳士はマスターから、
自分が座禅に行くかどうかを迷っていることを聞いたのだろうか?


 


いや、それは考えにくい。


 


なぜなら参禅を迷っていることは、
マスターにもまだ話していないのだから...。


 


「人には転機があります」


 


紳士は静かに語りはじめた。


 


「ですが本当の転機がやってきたとき、人は躊躇するものです」。


 


男は自分のことを言われていることに気づいて、驚いた。


 


「あなたもそんな経験がおありなんですか?」


 


男は思わず聞き返した。


 


「勿論ですよ(笑)」


 


紳士は笑顔で応えた。


 


「わたしは今、人生の大きな転機にいることを知っています」


「ですが同時に、今すぐでなくてもいいんじゃないか
というような気がして、決断をできずにいるのです」


 


男の言葉に紳士は黙って聞き入っていた。


 


男はつづけた。


 


「さきほど、本当の転機がやってきたとき、
人は躊躇するとおっしゃいましたね」


「わたしは今、それが自分のこととして聴こえています」


「わたしは躊躇しているのです」


 


この言葉に紳士はまたにっこりした。


 


「あなたは誠実な人です」


「自分が今、何を感じているのかを目を背けず感じ、
正直にそのことを打ち明ける勇気を持っていらっしゃる」


 


 


「勇気だなんてそんな!」


 


男は紳士の思いがけぬ言葉に思わず謙遜した。


 


 


「人は自分が本当に感じていることには
気づきたくないものです」


「その先に本当の魂の悦びがあったとしても、
みたくないものと向き合うぐらいなら、
今のままでいいと自動的に判断してしまうのです」


「そうして甘美で魅力的なものを得るのです」


 


意味深な言葉だと男は思った。


 


 


男は聞いた。


「甘美で魅力的なもの...とはなんですか?」


 


 


「それは...他人や社会、そして自分自身に
不平不満を言い続けられることです」


「それを人は得るのです」


 


 


!!!!


 


 


男はドキッとした。


 


以前なら「ふ~ん」とか
「ああ、そうそう、そういう人たちいっぱいいるよな」とか
人ごとにしか聞こえなかったであろう紳士の言葉に、男はドキッとした。


 


男は今自分の中で湧きおこったものから、
目を背けたい衝動が起こるのを感じた。


 


 


目を背けるな、観るときだ。


 


 


男の中にそんな思いが浮かび、逃れたい衝動との葛藤が起こった。


 



 


 


「あなたは...」


 


紳士がまた口を開いた。


 


「あなたは何を今、迷っていらっしゃるのですか?」


 


 


男は紳士の目を見た。


 


 


そして正直に今の自分のことを話した。


 


「マスターに禅の修行のことを教えてもらったのです」


「わたしは禅という言葉を聞いた瞬間から、
心がとても強く惹かれているのを感じました」


「人生の転機であることを、わたしの深いところは知っている感じです」


 


「ですが...」


 


 


「行くことを決めかねているんですね」


 


 


「ええ...そうです」


 


 


紳士はロックグラスを揺らしながら、
グラスの中で琥珀色の液体が小さく波打つのを眺めた。


そして静かに口を開いた。


 


 


「釈迦は自分が苦しんでいることを自覚していました」


「ゆえに王家の暮らしを、持っているもののすべてを捨て、
苦行林に入りました」


 


 


紳士の言葉に男はハッとした。


 


自分が感じていたことそのものを言い当てていたからだ。


 


「ですが...」


 


紳士はつづけた。


 


「それだけでしょうか?」


 


 


え!


 


 


男は思わず顔をあげ、紳士を観た。


 


「あなたが禅に惹かれたのは、
ただ苦しみから逃れたいという、それだけでしょうか?」


 


 


男はハッとした。


男の中で何かがはじけた。


そしてそれは男の中で輝きだした。


 


 


「いえ...いいえ、違います」


 


「わたしは...向こう側を観てみたいのです!」


「見たことのない地平を、この目で見てみたいのです!」


 


力強い言葉だった。


 


 


男自身が自分の言葉に感動し、勇気づけられる気がした。


 


そうだ!わたしは向こう側を観てみたいのだ!


 


観ずに死ねないくらい...好奇心がっ。


 


そう!好奇心がわたしを突き動かしているんだ!


 


男は自らの中に明るい光が輝きだすのを感じた。


 


つづく。


 


 



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