トウドウ - Vedaprakasha
メルマガ「ヨーガスートラを読む」サンプル記事
2019/7/28配信
皆様
ヴェーダプラカーシャ・トウドウです。
さて、今回より不定期ですが、このメルマガ購読者の方のための、
ヨーガの哲学書であるマハーリシ・パタンジャリの「ヨーガスートラ」全4章を、
「ヨーガスートラを学ぶ」と題してメルマガシリーズで紐解いていきたいと思います。
スートラとは最小の言葉で真理を説く文章の形式です。
スートラは漢訳では「経（きょう）」と表記されます。
経は「たて糸」を意味します。
布を編むときには縦糸と横糸で編んでいきます。
布の端から端まで走っているのが経糸です。
そこから普遍的知識を伝えるのがスートラであるといいます。
経糸は、草がんむりに糸（いと）と又+土（けい）を合わせた文字ですが、
ちなみに、又+土（けい）には聖という意味があります。つまり聖なるものです。
スートラが経糸であるのに対して、タントラは横糸です。
横糸により布の模様を表現していくことから、
タントラは実践的な知識を指します。
そこでヨーガスートラはヨーガの原理を説く哲学であり、
ラージャヨーガ（最高のヨーガ）と呼ばれ、
タントラに由来するヨーガはハタヨーガと呼ばれます。
ヨーガスートラは4章196のスートラからなります。
第一章 サマーディ（没我）の章
第二章 サーダナ（修養法）の章
第三章 ヴィブーティ（超人的な力）の章
第四章 カイヴァリャ（解脱）の章
ヨーガスートラは“サマーディ（没我）の章”から始まります。
サマーディは、三昧（さんまい）と漢字音写されますが、
その意味は没我状態であり、完全な集中状態です。
これは深い瞑想における体験であり、チッタ（心、精神）が
一つの対象に集中していて動揺しない状態です。
この章では、チッタの集中対象により、
様々なサマーディの状態があることを述べています。
凡例
A=aの長音、I=iの長音、U=uの長音、R=母音のr、L=母音のl、
M=mの鼻母音、_N=nの喉音、~n=nの口蓋音、N=nの反舌音、
T=tの反舌音、D=dの反舌音、S=sの摩擦音、H＝hの気息音
------------------------------------------------------
1-1
atha yogAnushAsanam.
「これよりヨーガの教説[を始める]」
【解説】
第1章ではサマーディと関連させて、ヨーガについての哲学の教えが詳細に説かれます。
マハーリシ・パタンジャリは、初めてヨーガ哲学を体系的に説きました。ここでいう「ヨーガ」（yoga）は、サマーディ（没我）のことを指します。サマーディとは対象への完全な集中状態であり、究極的なサマーディは精神的な働きがすべて停止し、純粋な意識のみが存在する状態です。
1-2
yogaH citta-vRtti-nirodhaH.
「ヨーガとはチッタの活動の停止[状態]である」
【解説】
ヨーガとは、人間の精神面の活動や機能が最小限の状態を指します。
精神活動はチッタ・ヴルッティ（citta-vRtti）、停止状態をニローダ（nirodha）と言います。チッタは精神、ヴルッティは活動です。チッタとは「知覚、思考、感情、注意、自我、知性」など理性や感情や本能などの人間の精神面を指します。ヴルッティは、動詞語根のヴルト（vRt）「回る、転がる」に由来するもので、「活動、機能、はたらき」を指します。パタンジャリは、精神活動の停止状態をヨーガと定義しています。
ヨーガスートラでは、ヨーガは「結び付き」ではなく、「集中」という意味で使われています。完全な集中状態はサマーディ（samAdhi）と言われます。没我、没頭、専心などとも訳せます。これは、自分が注意を向けている対象のみが頭の中に認識され、あたかも自分という自我意識はなくなったかのような状態と定義されています。何かに夢中になり、我を忘れる状態を「何とか」三昧（ざんまい）などと言いまが、これはサマーディの漢字音写です。
人間の頭の中にはさまざまな精神活動が生まれては消えますが、心に浮かぶ想念や感情や記憶やイメージが、チッタ・ヴルッティなのです。想念など精神活動が停止すると、精神には揺らぎはなくなり、完全な集中状態が得られます。
ヴィヴェーカーナンダは、湖の例えで説明しています。
「湖の表面にはさざ波があり、湖底は見えません。さざ波が引き、静けさがあるときのみ、湖底が視界に入ります。常に、水が濁り、またかき乱されていれば、湖底を見ることができません。水が透明で波がなければ、湖底を見ることができます。湖底はプルシャ（真我）、湖はチッタ（精神）、波はヴルッティ（活動）です」
ヴャーサによれば、このスートラ1-2では、すべての精神活動が停止しているとは述べられておらず、それが、チッタの活動を伴うサンジニャータ・サマーディ（有想三昧）と、チッタの活動を伴わないアサンジニャータ・サマーディ（無想三昧）であると説きます。
賢者ヴャーサによれば、集中という観点から考えると、チッタ・ヴルッティには動揺した状態から、活動が停止した状態まで次の五つのブーミ（bhUmi 状態、段階）があります。なかでも、ヨーガ（サマーディ）に該当するのは、エーカーグラ（一点集中）と、ニルッダ（活動停止）の状態です。どちらも静寂と目覚めの両方があり、チッタ・ヴルッティが停止している状態です。このとき対象への集中が可能です。ほかのチッタの状態では、静寂がなく、集中が得られません。
1 クシプタ（kSipta） 動揺した状態
2 ムーダ（mUDha） 鈍い・重い・ぼーっとした状態
3 ヴィクシェーパ（vikSepa） 注意が散漫な状態
4 エーカーグラ（ekAgra） 注意が一点に集中した状態
5 ニルッダ（niruddha） 活動が停止した状態
サムプラジニャータ・サマーディは、エーカーグラ段階であり、サアムプラジニャータ・サマーディはニルッダ段階です。
１）対象の認識を有するサマーディ（サムプラジニャータ・サマーディ）
チッタの活動は完全に停止せず、認識対象を認識しているため、サムプラジニャータ「認識」と呼ばれます。これは、エーカーグラ（一点集中）の段階での集中で、有想三昧と訳されています。この段階ではさらに四つの集中段階があります。これらはサマーパッティ（samApatti 精神統一、定）と呼ばれます。
1 ヴィタルカ（vitarka） 粗雑な対象に関する想念への集中
2 ヴィチャーラ（vicAra）精妙な対象に関する想念への集中
3 アスミター（asmitA） 自我意識への集中
4 アーナンダ（Ananda）至福意識への集中
２）対象の認識を有さないサマーディ（アサムプラジニャータ・サマーディ）
チッタの活動が完全に消滅し、対象の認識作用も止まります。経験的には、心が“無”や“空”の状態であり、ニルッダ（活動停止）の段階です。想念がないという意味で無想三昧と訳されています。
ニルッダの段階では、チッタの活動は完全に停止し、プルシャ（puruSa 真我）に没入しています。プルシャは認識の対象ではなく認識者自身です。ですから認識の対象となるものは存在せず、対象への認識もありあません。そのため、認識を“有さない”サマーディ（アサムプラジニャータ・サマーディ）と呼ばれます。
湖水の例えでは、水中に潜るにつれ水の動きは静まります。湖底に達し完全な静寂の中にあるのがアサムプラジニャータ・サマーディと言っていいでしょう。この湖底にあたるのがプルシャ（真我）です。
（続く）
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スートラは漢訳では「経（きょう）」と表記されます。
経は「たて糸」を意味します。
布を編むときには縦糸と横糸で編んでいきます。
布の端から端まで走っているのが経糸です。
そこから普遍的知識を伝えるのがスートラであるといいます。
経糸は、草がんむりに糸（いと）と又+土（けい）を合わせた文字ですが、
ちなみに、又+土（けい）には聖という意味があります。つまり聖なるものです。
スートラが経糸であるのに対して、タントラは横糸です。
横糸により布の模様を表現していくことから、
タントラは実践的な知識を指します。
そこでヨーガスートラはヨーガの原理を説く哲学であり、
ラージャヨーガ（最高のヨーガ）と呼ばれ、
タントラに由来するヨーガはハタヨーガと呼ばれます。
ヨーガスートラは4章196のスートラからなります。
第一章 サマーディ（没我）の章
第二章 サーダナ（修養法）の章
第三章 ヴィブーティ（超人的な力）の章
第四章 カイヴァリャ（解脱）の章
ヨーガスートラは“サマーディ（没我）の章”から始まります。
サマーディは、三昧（さんまい）と漢字音写されますが、
その意味は没我状態であり、完全な集中状態です。
これは深い瞑想における体験であり、チッタ（心、精神）が
一つの対象に集中していて動揺しない状態です。
この章では、チッタの集中対象により、
様々なサマーディの状態があることを述べています。
凡例
A=aの長音、I=iの長音、U=uの長音、R=母音のr、L=母音のl、
M=mの鼻母音、_N=nの喉音、~n=nの口蓋音、N=nの反舌音、
T=tの反舌音、D=dの反舌音、S=sの摩擦音、H＝hの気息音
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1-1
atha yogAnushAsanam.
「これよりヨーガの教説[を始める]」
【解説】
第1章ではサマーディと関連させて、ヨーガについての哲学の教えが詳細に説かれます。
マハーリシ・パタンジャリは、初めてヨーガ哲学を体系的に説きました。ここでいう「ヨーガ」（yoga）は、サマーディ（没我）のことを指します。サマーディとは対象への完全な集中状態であり、究極的なサマーディは精神的な働きがすべて停止し、純粋な意識のみが存在する状態です。
1-2
yogaH citta-vRtti-nirodhaH.
「ヨーガとはチッタの活動の停止[状態]である」
【解説】
ヨーガとは、人間の精神面の活動や機能が最小限の状態を指します。
精神活動はチッタ・ヴルッティ（citta-vRtti）、停止状態をニローダ（nirodha）と言います。チッタは精神、ヴルッティは活動です。チッタとは「知覚、思考、感情、注意、自我、知性」など理性や感情や本能などの人間の精神面を指します。ヴルッティは、動詞語根のヴルト（vRt）「回る、転がる」に由来するもので、「活動、機能、はたらき」を指します。パタンジャリは、精神活動の停止状態をヨーガと定義しています。
ヨーガスートラでは、ヨーガは「結び付き」ではなく、「集中」という意味で使われています。完全な集中状態はサマーディ（samAdhi）と言われます。没我、没頭、専心などとも訳せます。これは、自分が注意を向けている対象のみが頭の中に認識され、あたかも自分という自我意識はなくなったかのような状態と定義されています。何かに夢中になり、我を忘れる状態を「何とか」三昧（ざんまい）などと言いまが、これはサマーディの漢字音写です。
人間の頭の中にはさまざまな精神活動が生まれては消えますが、心に浮かぶ想念や感情や記憶やイメージが、チッタ・ヴルッティなのです。想念など精神活動が停止すると、精神には揺らぎはなくなり、完全な集中状態が得られます。
ヴィヴェーカーナンダは、湖の例えで説明しています。
「湖の表面にはさざ波があり、湖底は見えません。さざ波が引き、静けさがあるときのみ、湖底が視界に入ります。常に、水が濁り、またかき乱されていれば、湖底を見ることができません。水が透明で波がなければ、湖底を見ることができます。湖底はプルシャ（真我）、湖はチッタ（精神）、波はヴルッティ（活動）です」
ヴャーサによれば、このスートラ1-2では、すべての精神活動が停止しているとは述べられておらず、それが、チッタの活動を伴うサンジニャータ・サマーディ（有想三昧）と、チッタの活動を伴わないアサンジニャータ・サマーディ（無想三昧）であると説きます。
賢者ヴャーサによれば、集中という観点から考えると、チッタ・ヴルッティには動揺した状態から、活動が停止した状態まで次の五つのブーミ（bhUmi 状態、段階）があります。なかでも、ヨーガ（サマーディ）に該当するのは、エーカーグラ（一点集中）と、ニルッダ（活動停止）の状態です。どちらも静寂と目覚めの両方があり、チッタ・ヴルッティが停止している状態です。このとき対象への集中が可能です。ほかのチッタの状態では、静寂がなく、集中が得られません。
1 クシプタ（kSipta） 動揺した状態
2 ムーダ（mUDha） 鈍い・重い・ぼーっとした状態
3 ヴィクシェーパ（vikSepa） 注意が散漫な状態
4 エーカーグラ（ekAgra） 注意が一点に集中した状態
5 ニルッダ（niruddha） 活動が停止した状態
サムプラジニャータ・サマーディは、エーカーグラ段階であり、サアムプラジニャータ・サマーディはニルッダ段階です。
１）対象の認識を有するサマーディ（サムプラジニャータ・サマーディ）
チッタの活動は完全に停止せず、認識対象を認識しているため、サムプラジニャータ「認識」と呼ばれます。これは、エーカーグラ（一点集中）の段階での集中で、有想三昧と訳されています。この段階ではさらに四つの集中段階があります。これらはサマーパッティ（samApatti 精神統一、定）と呼ばれます。
1 ヴィタルカ（vitarka） 粗雑な対象に関する想念への集中
2 ヴィチャーラ（vicAra）精妙な対象に関する想念への集中
3 アスミター（asmitA） 自我意識への集中
4 アーナンダ（Ananda）至福意識への集中
２）対象の認識を有さないサマーディ（アサムプラジニャータ・サマーディ）
チッタの活動が完全に消滅し、対象の認識作用も止まります。経験的には、心が“無”や“空”の状態であり、ニルッダ（活動停止）の段階です。想念がないという意味で無想三昧と訳されています。
ニルッダの段階では、チッタの活動は完全に停止し、プルシャ（puruSa 真我）に没入しています。プルシャは認識の対象ではなく認識者自身です。ですから認識の対象となるものは存在せず、対象への認識もありあません。そのため、認識を“有さない”サマーディ（アサムプラジニャータ・サマーディ）と呼ばれます。
湖水の例えでは、水中に潜るにつれ水の動きは静まります。湖底に達し完全な静寂の中にあるのがアサムプラジニャータ・サマーディと言っていいでしょう。この湖底にあたるのがプルシャ（真我）です。
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ディヴャ・チャンの＜オルタナティブセラピ講座＞⇒ https://resast.jp/page/event_series/42911/
【オンライン】イントロダクション講座（事前説明会） ⇒ https://resast.jp/page/event_series/43180/
イントロダクション講座（事前説明会） ⇒ https://resast.jp/page/event_series/41241/
SOMA瞑想コース（5回セットコース）⇒ https://resast.jp/page/event_series/43857/
ラージャヨーガ「ヨーガスートラ」講座（全6回） ⇒ https://resast.jp/page/event_series/45850/
ハタヨーガ3時間コース（2日間）⇒ https://resast.jp/page/event_series/43862/
ヨーガの神髄バガヴァドギーター講座（全10回） ⇒ https://resast.jp/page/event_series/41466/
基礎から学ぶマントラ・チャンティング特別講座（全4回）⇒ https://resast.jp/page/event_series/41959/
サンスクリット基礎講座（全4回） ⇒ https://resast.jp/page/event_series/41981/
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